それでは、最後のコツに進みましょう。こういう3つのポイントを挙げる場合のお約束ですが、これが一番大切で難しいです。
③センスは、読んだ文章量X読んだ文章の質で決まる
試しに、夏目漱石作品を大量に読んでみましょう。一日何時間というハイペースで。絶対、メールを打つときに「好かろう」(よかろう)という古くさい言葉が浮かんでくるはずです。もしくは翻訳作品。「A社の炊飯器の性能と当社のそれを比べてみよう」など、ちょっとだけ不自然な(直訳っぽい)日本語が浮かぶと思います。他には民法。あなたは「‥の場合にはその限りではないけどね」などと言い出すかもしれません。 つまり何を言いたいかというと、人間は触れたものに影響されますね、それは文章についても同じということです。これは私の実感ですが、人の文章を読むとそのあと自分が書く文章がその人の文体に似てきます。熱中してドラマを見ていると、そのヒロインに口調が似てくるのと同じ感じ。いい文章と沢山出会わないと、自分からいい文章は生まれません。だから、たくさん文章を読みましょう。夏目漱石も、太宰治も、川端康成も、作家でもありますが、みーーーんな、本が大好き。夥しい量の小説を読んで、大作家になったのです。
コツと言いながら、結局本を読めってことかよ!? 学校の先生と同じじゃないか!ってお怒りの気持ちもわかります。でも、これが唯一の方法だと思います。
最後に、ここまで読んでいただいたみなさんにひとつ朗報です。この「多読作戦」、結構短時間で効果が出ます。例えば新製品の紹介文を3本を書くという日は、過去の紹介文や全然関係ない会社の新製品紹介文を何でも1時間、まるでシャワーを浴びるように読み続けます。そうすると、書き始めからすらすらと言葉が出ます。特に接続詞は、まるで用意されていたかのようにぽんぽん浮かんできます。逆に、普段書き慣れているジャンルの文章であっても、久々に取り組むような時は、なかなか調子が出ません。
文章もスポーツと同じ。ルールの理解と基礎体力、そして良いコーチが大切です。一度騙されたと思って、試してみてください。
完結な文章をさらっと書ける人は、「イケメン枠」とまではいかなくても「知的で奥が深そうな素敵男性枠」に入れてもらえる…!ような気がします。逆に言えば、どんなに仕事ができたりアイディアマンだったりしても、いざ文章を書かせてみると「この仕事を好きな理由は、自分の実力を常に試せる環境だから好きです!」なんて支離滅裂の文章を書くような人だったら、残念ですが「もしかしたら期待はずれ?」という気持ちを抱かれてもしょうがないと思います。お勉強がインプットだったら、文章にして表すのはアウトプットです。どんなに論理的で画期的な考えが頭に浮かんでいても、その内容を人が読みたいと思う文章にアウトプットできなければ、それは考えていないのと同じことです。自分の実力より低い評価をされてしまっては、悲しいですよね。昇進論文や卒業論文などの人生の中で大切な表現の機会に、文章を書けないせいで本領を発揮できなければ、悲しいなんかじゃ済みません。
個人によって考え方はありますが、自分の文章は自分で書かなければならない、人に考えてもらうのは気が引ける、という考え方に日本人は特にとらわれすぎている気がします。海外の大統領は、スピーチライターの存在が公にされていますし、国会の答弁だって、全部の発言を発言者自身が書いているわけではありません。個人には得手不得手があって当然ですし、書きたくない文章だけど、自分がやらなきゃないから頑張って書くというは、本当に合理的な作業でしょうか。「どうしても文章だけが苦手で泣きそう…、」「そもそも本読む時間なんかないよー、」という時は、新たなスポーツを始めるくらいしんどい「超多読作戦」に取り組む前に、「書ける屋」にご相談いただければ、文章のプロがお悩みにお応えします。